【オンライン企画】三島由紀夫という美学

 みなさん、三島由紀夫という名前を聞いたことはありますか?

 第二次世界大戦前後に多くの作品を残し、45歳の若さで自らこの世を去った作家です。今年2020年は没後50年に当たります。

 高級官僚の父と有名漢学者の娘である母のもとに生まれた三島由紀夫は、幼時「肉体」よりも先に「言葉」が訪れたといいます。学習院高等科を首席で卒業し、東京帝国大学法学部に進学した三島は、小説「花ざかりの森」でデビューします。そして一度は大蔵省に務めたものの、創作に専念するために退職し、「仮面の告白」や「潮騒」「金閣寺」など数々の作品を書き続けました。

 三島文学の最大の特徴は卓越した日本語力だといわれています。交流の深かった歌手で俳優の美輪明宏も三島作品を「日本の美意識」だと評しています。歌舞伎や能などの古典にも精通する彼の文体の美しさは日本人作家の中でも屈指のもので、ノーベル文学賞の候補にも挙がりました。

 しかし1970年11月25日、三島由紀夫は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地(現防衛省)に仲間とともに赴きました。そして自衛隊員たちに決起を求めて割腹自殺を遂げたのです。

 エリート家庭に生まれた三島がなぜそのような最期を選んだのか。未だに分からない部分も多いのですが、彼の遺した作品を読むことで彼の思いを感じることはできます。三島由紀夫没後50年に寄せて、彼の美の世界に足を踏み入れてみませんか?  (MMRC 司書教諭)

【展示している本】※こちらで紹介した本も貸出可能です。

〈三島由紀夫の小説〉
『金閣寺』、『潮騒』、『美しい星』、『春の雪 豊饒の海』、『岬にての物語』『サド侯爵夫人 わが友ヒットラー』、『鹿鳴館』、『花ざかりの森 憂国』、『真夏の死 自選短編集』、『鏡子の家』、『殉教』、『禁色』(新潮社)
『Sun & steel 英文版』、『三島由紀夫短編集 英文版』(講談社インターナショナル)

〈三島由紀夫に関する書籍〉
・三島由紀夫ほか『夢』(ポプラ社)
・北上次郎編『14歳の本棚 青春小説傑作選 初恋友情編』(新潮社)
・中島岳志、平山周『吉江藤淳 : 終わる平成から昭和の保守を問う』(河出書房新社)
・島内景二『三島由紀夫 豊饒の海へ注ぐ』(ミネルヴァ書房)
・新潮文庫編『三島由紀夫 時代が後から追いかけた。そうか!早すぎたんだ』(新潮社)
・松本徹ほか編『三島由紀夫事典』(勉誠出版)
・奥野健男『三島由紀夫伝説』(新潮社)
・三好行雄編『三島由紀夫必携』(学灯社)